令和3年度施政方針
新型コロナウイルス感染症が中国で初めて確認され,早1年余りが経過しましたが,人類がこれまで経験したことのない,このウイルスによる急速な感染拡大は,世界中の人々の生活を一変させました。
日常生活ではマスク着用やソーシャルディスタンスの確保といった感染症対策がもはや常識となり,世界中での感染者数は累計で1億人を超えました。
一方,我が国においては,欧米ほどの感染者数や死者数はないものの,昨年秋から爆発的に感染者数が増加し,依然として大都市圏を中心に国の緊急事態宣言が継続される中,このウイルスと闘う医療現場の最前線では逼迫した状況が続いております。
また,経済面においても外出自粛等の影響により,飲食業をはじめ幅広い分野に深刻な影響を及ぼしております。
現在,一部の国においては,感染症対策の切り札として,既にワクチンの接種が始まっており,我が国においても,医療従事者への先行接種を皮切りに,高齢者,そして,それ以外の方々へ順次対象者を拡大することとしております。
本市としましても,市民の皆様にできるだけ早く接種いただけるよう,現在,市を挙げて鋭意準備を進めておりますので,何とぞ御理解いただきますようお願い申し上げます。
いまだ収束の兆しが見えない,このウイルスと人類との闘いは,多くの方々がワクチンを接種し,集団免疫を獲得するまでは,しばらく続くものと思われ,今後も,このウイルスとの長期的な共存を見据えた生活スタイルを継続する必要があります。
市民の皆様や事業者の皆様におかれましては,気を緩めることなく,引き続きマスクの着用や手洗いの励行,室内の換気をはじめとする感染症対策の徹底に努めていただきますようお願い申し上げます。
本市としましても,コロナ禍により疲弊した地域経済の立て直しと市民の皆様の暮らし,そして命を守るため,今後もスピード感を持って実効性のある施策を実施してまいります。
さて,昨年を振り返って見ますと,毎年のように全国各地で甚大な被害をもたらす自然災害が,熊本地震からの復興途上である本県を襲いました。
この「令和2年7月豪雨」は,本県を中心に九州,中部,東北地方など,広範囲にわたり甚大な被害をもたらしました。
この豪雨災害により,被災された方々は今なお生活再建の見通しが立たず,応急仮設住宅などでの生活を余儀なくされておられます。改めてお亡くなりになられました方々に哀悼の意を表しますとともに,被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
被災地の一日も早い復旧・復興をお祈りいたします。
今回の豪雨災害による人吉球磨地域の惨状は目を覆うものがあり,あの身近で普段穏やかな球磨川が激流と化し,家々を飲み込む様を我々は目の当たりにし,自然災害の脅威と人間の無力さを思い知らされました。
本市におきましても,この災害を決して対岸の火事として受け止めるのではなく,同様の災害が発生することを想定した防災・減災対策を早急に講じる必要があると考えております。
特に近年の激甚化する自然災害に対応するためには,何よりも市民の皆様の命を守ることが重要であり,市民自らがいち早くその行動をとれるよう,今後とも防災意識の向上に努めるとともに,避難勧告等を含めた緊急情報を迅速かつ分かりやすく提供してまいります。
一方で,本県にとって,とりわけ宇土市民にとってコロナ禍の暗いムードを吹き飛ばすほどの大変嬉しいニュースがありました。
大相撲秋場所にて,本市出身の正代関が,見事,県出身力士として初の幕内優勝と実に58年振りとなる大関昇進というダブルの偉業を成し遂げました。
あの優勝の瞬間は,市民の誰もが熱いものが込み上げ,生涯忘れることのできない出来事になったのではないかと思います。
今年の1月場所では,2度目の優勝を惜しくも逃しましたが,近い将来,新型コロナウイルス感染症が収束し,再度の優勝を果たした暁には,是非とも,本市での祝賀パレードを実施したいと考えております。
また,同じく本市出身のサッカーの植田直通選手も国際親善試合で日本代表として決勝点を決める活躍を見せてくれました。
そして,小中学生においても,新型コロナウイルス感染予防のため,スポーツ活動が自粛される中,様々な競技においてめざましい活躍があり,市民の皆様に夢や希望,そして感動を与えてくれました。
そのような中,いよいよ本年4月から,熊本地震からの創造的復興のシンボルとなる新庁舎の本体工事に着手いたします。
令和5年5月の供用開始までの間,市民の皆様には,何かと御不便をおかけいたしますが,工事期間中は安全対策に万全を期してまいりますので,御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
また,昨年,新たな返礼品の追加や専用ポータルサイトの増設により,大幅に寄附金額が増加しました「ふるさと宇土応援寄附金」につきましては,既に本年1月末時点で,寄附金額が昨年度実績の5倍強となる11億円を超えるなど,全国の皆様から多くの寄附をいただいております。
この応援寄附金は,本市の貴重な財源となることはもちろん,返礼品として本市の多くの特産品を全国にお送りすることから,地域経済の活性化になり,ひいては本市の全国に向けたPRにもつながる大変有益な施策であると考えております。
今後も,現状の寄附金額に甘んじることなく,引き続き市内の生産者や事業者と連携し,新たな返礼品の開発を推進するなど,自主財源の拡大に向けて積極的に取り組んでまいります。
さて,令和3年度は,「第6次宇土市総合計画」が3年目を迎えますが,これをより実効性のあるものにするためには,持続可能な財政基盤の強化と効率的な行政運営を推進することが重要となってまいります。
加えて,国のデジタル改革や働き方改革の推進,また,ウィズコロナ時代を見据えた業務の在り方についても見直す必要があります。
これらを受け,令和3年度から今後5年間を計画期間とする第9次宇土市行財政改革大綱を先月策定しました。
この大綱では,あのトヨタ自動車の生産性を飛躍的に向上させた「カイゼン」をキーワードに,「スマートな行政運営を目指すカイゼン」をはじめとする“4つのカイゼン方針”を掲げ,今後,行政運営の効率化と財政の健全化に向け積極的に取り組んでまいります。
また,今般,新型コロナウイルス感染症の影響により,全国的にテレワークなどの新しい働き方が浸透したこともあり,都市部を離れ自然豊かな地方で生活したいという機運が高まっております。
本市としましても,この機会を逃すことなく,コロナ禍のピンチをチャンスとして捉え,企業誘致や移住・定住の促進を図るため,あらゆる機会を通じて本市の魅力を発信し,新たな時代に対応した地方創生の実現に向け,様々な取組を加速させてまいります。
そのためにも,これまで以上に議員の皆様と連携し,市民の皆様の声を大切にして,市政運営に取り組んでまいりたいと考えておりますので,どうか皆様の御理解と御協力を何とぞよろしくお願い申し上げます。
次に,令和3年度予算案の概要について申し上げます。
予算編成につきましては,新型コロナウイルス感染症の影響により,市税の減少が見込まれ,熊本地震関連で借り入れた地方債の償還も一部始まる中,依然として社会保障費は増加し続けていることから,義務的経費が増加し,大変厳しい作業となりました。
そのような中にあっても,直面する新型コロナウイルス感染症への対応と,新しい生活様式の実現,また,復興から将来の発展に資する事業を確実に実施しなければなりません。
このため,国県の補助金や基金,市債等の活用により財源確保を図りながら,市民の皆様の目線に立った様々な施策について,その必要性・緊急性・優先度を踏まえた事業の選択と集中を行い,総額194億7,000万円の一般会計予算案を調製いたしました。
それでは,令和3年度一般会計予算案の主な施策の概要について,宇土市総合計画の基本構想の内容に沿って,御説明申し上げます。
1点目は,震災復興分野の「“輝く”未来〜震災からの復興〜」についてであります。
平成28年の熊本地震から間もなく5年が経過しようとしております。これまで,災害からの早期復旧を目標に掲げ,市民の生活再建を最優先に,創造的復興に向けた取組を進めてまいりました。
その結果,多くの再建が進み,新庁舎の建設におきましても,今年度に設計業務が完了し,令和3年度から建設工事に取り掛かる予定としております。また,併せまして,庁舎周辺道路の整備を行ってまいります。
次に,自然災害の防止や減災に向け,引き続き,防災対策・減災対策の充実に努めてまいります。
まず,消防団員の報酬額を改定し,その職責に見合った報酬額とし,団員の確保と防災力の向上を図ってまいります。
また,河川氾濫による浸水被害等を軽減するため,河川の浚渫工事を行ってまいります。
さらには,洪水に係る浸水想定区域の基準を見直した総合防災マップを作成し,全世帯に配布する予定としております。
そのほか,網田地区の交流・防災拠点施設として,令和6年度の供用開始を目指し,支所機能を併設した網田コミュニティセンターの建設事業を進めてまいります。
次に,2点目は,教育・文化分野の「“輝く”人〜学びのふるさとづくり〜」についてであります。
幼児教育につきましては,幼稚園の一時預かり事業,特別支援教育などについて,令和3年度も継続して行ってまいります。
学校教育につきましては,市独自で行っております特別支援教育,適応指導教室,スクールサポーターなどの事業を令和3年度も継続して行ってまいります。
市立小中学校のICT整備につきましては,今年度末までに,各教室で学習用タブレットを使用できる環境を整備し,一人一台の学習用タブレットの配備が完了します。令和3年度からは,段階的に学校の授業だけでなく,家庭学習等においても学習用タブレットを活用できるよう教員のICT指導力の向上などの整備を行ってまいります。
学校の施設につきましては,花園小学校・緑川小学校・住吉中学校のプール塗装工事を行い,学習環境を整えるとともに,生徒が安心してスポーツ活動が行えるよう鶴城中学校の防球ネット工事を行ってまいります。
そのほか,将来的な給食費会計の公会計化を目指し,先ずは給食センターにおいて学校が担っております給食費の滞納管理業務の引継ぎを行ってまいります。
次に,スポーツの振興につきましては,延期されております東京2020オリンピックの聖火リレー後のミニセレブレーションを開催する予定としております。
また,子ども達のスポーツ活動を応援するため,スポーツ振興基金を活用した支援の拡大を行ってまいります。
文化遺産の保存・活用につきましては,復旧が完了しました船場橋のスポットライト改修工事を行うとともに,国内現役最古の上水道である轟泉水道を保存していくため,国指定に向けて調査を進めてまいります。
そのほか,駐車場不足が長年の懸案事項でもありました,宇土市立図書館の駐車台数を20台増加し,利用者の増加,利便性の推進を図ってまいります。
次に,3点目は,保健・福祉・医療分野の「“輝く”絆〜安心のふるさとづくり〜」についてであります。
子育て支援につきましては,これまで児童センターで行っておりました,つどいの広場事業を,浦田仮設団地跡のみんなの家を活用し,実施してまいります。
また,保育所及び放課後児童クラブにつきましては,第2期宇土市子ども・子育て支援事業計画に沿って,引き続き施設の整備等を行ってまいります。
そのほか,これまで実施してまいりました中学生までを対象とした乳幼児・こども医療費の助成,多子世帯等を対象とした保育所等における副食費の補助などについて,令和3年度も継続して行ってまいります。
高齢者支援につきましては,熊本県後期高齢者医療広域連合からの受託事業であります75歳以上の後期高齢者医療加入者等を対象とした,高齢者の保健事業と介護予防等の一体的な実施に取り組んでまいります。
また,成年後見支援センターの運営を外部に委託し,相談支援機能の強化を図ってまいります。
障がい者福祉につきましては,増加するニーズに対し,引き続き,市独自の補助であります在宅介護手当や紙おむつ助成,福祉タクシー券助成などの事業を行うとともに,宇城圏域の市や町,事業所と連携しながら障がい者の日常生活,社会生活を支援してまいります。
次に,4点目は,産業・経済分野の「“輝く”産業〜活力のふるさとづくり〜」についてであります。
まず,農林業の振興につきましては,拡大し続ける鳥獣被害に対し,先進的な取組をされている「くまもと☆農家ハンター」の協力を得ながら,地域住民へ鳥獣に関する正しい知識や防除対策などの習得について支援するとともに,農作地への侵入防止柵の設置補助や狩猟免許取得補助を継続して行ってまいります。
水産業の振興につきましては,長部田港の浚渫及び荷上場の嵩上げ等の事業に取り組むとともに,戸口地区の高潮対策工事を実施するに当たり,その効果等の分析を行い,効果的な減災対策を進めてまいります。
商工業の振興につきましては,宇土マリーナにおける施設の防水工事,及びクレーンの設備点検を行い,今後の維持管理について検討してまいります。
観光の振興につきましては,「日本の渚百選」,「日本の夕陽百選」に選定されております「御輿来海岸」を望む島山の干潟景勝地に展望広場を整備するため,地質調査や概略設計を行ってまいります。
次に,5点目は,生活環境・都市基盤分野の「“輝く”まち〜安全のふるさとづくり〜」についてであります。
まず,道路・交通網の整備につきましては,今年度から都市計画道路「北段原線」の未整備区間の整備に着手しております。令和3年度は,用地買収を行い,令和6年度の完成に向けて整備を進めてまいります。これにより,市街地の環状道路が完成し,交通機能や防災機能面の向上が図られると考えております。
また,中央公園遊具の更新を行い,市民の憩いの場として,安全で快適な遊び場の整備を図ってまいります。
環境保全につきましては,ごみの量が増加する中,カラス等からの被害を最小限に防ぐため,ごみ集積場設置補助金の増額を行い,地域の負担軽減を図ってまいります。
交通安全対策につきましては,令和3年度も,引き続き,サテライト宇土からの寄附金などを活用し,カラー舗装,カーブミラー,防護柵などの整備を行ってまいります。
次に,6点目は,住民協働・行財政運営についてであります。
令和3年度は,先ほども申し上げましたように,社会保障費の増加に加え,熊本地震関連で借り入れた地方債の償還が一部開始されます。また,宇城広域連合のごみ処理施設の改修などが予定されており,これまで以上に行財政改革を進め,行政運営の効率化・円滑化に取り組む必要があると考えております。
また,歳入面におきましては,先ほども申し上げましたが,今年度は,「ふるさと宇土応援寄附金」として,全国の皆様から多くの寄附をいただいております。令和3年度も,本市を全国にアピールしながら,引き続き,地方創生につながる取組を進めてまいります。
また,広告収入事業の展開など,その他の歳入につきましても積極的に取り組む必要があると考えております。
最後に,「地区別のまちづくり」についてであります。
本市の7つの地区は,地区ごとに歴史や文化などの地域資源,特性があり,抱えている課題も違います。令和3年度も,引き続き,分野ごとの各種施策と併せて,地区の特性を活かすためのまちづくりを展開してまいりたいと考えております。
以上,市政運営における基本的な考え方と主な施策について申し上げましたが,「復興」から「発展」へ,さらには「未来」へと,現に直面する課題に向き合いながら,誰もが宇土市に住み続けたいと思われるような「未来につながるまちづくり」の実現に向け,全力で取り組んでまいる所存でございます。
議員の皆様をはじめ,市民の皆様には,なお一層の御理解と御協力をお願い申し上げ,私の施政方針といたします。
カテゴリ内 他の記事
- 2020年5月8日 第3期市長マニフェストの達成状況を公表し...
- 2020年2月20日 令和2年度施政方針
- 2019年3月4日 平成31年度施政方針
- 2017年9月5日 小中学校の副教材購入費の助成について
- 2017年4月21日 平成29年度施政方針