古代の女王が眠る
4世紀になると、宇土半島の基部一帯には、九州で最も早く前方後円墳が造られるようになりました。
向野田古墳は、4世紀後半頃に造られた全長約90メートルの前方後円墳です。主体部は竪穴式石室で、その中には凝灰岩(ぎょうかいがん)刳り抜きの長大な舟形石棺が置かれていました。
石棺の長さは約4メートルもあり、全国で2番目の大きさです。棺の中は朱で染められ、30歳前後の女性人骨一体が北枕で納められていました。大型の古墳に女性1名だけを埋葬する例は極めて少なく、古代の社会構造を知る上で貴重な例として注目されています。
石棺内には鏡3面のほか、勾玉や車輪石などの美しい装身具が副葬されていました。石棺内に武器類はなく、石室と石棺の隙間に数多くの剣や刀などが置かれていました。これらの出土品は、一括して国の重要文化財に指定され、宇土市立図書館の郷土資料室に展示されています。