鶴の恩返し

鶴の恩返し

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今から1100年程前、 西暦901年頃のお話です。

宇土の町から南西に約2キロの所にきれいな形をした白山という山があり、 その山のふもとに轟という里がありました。

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その里に、 それは正直者の御門という夫婦がおりました。

夫は山に出て、 柴を刈り、 女房は機(はた)を織って暮らしていました。

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大晦日を迎え、 夫は女房の織った反物をもって町に売りに出かけました。轟の里を出て、 塩田(現在の宇土市古城町付近)まで来ると、 一羽の鶴が若者たちに捕らえられ、 まさに殺されようとしていました。

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夫は鶴がかわいそうになり、 大切な反物と取り換えてしまいました。その傷ついた鶴は夫の手で空高く放されました。

夫は女房にこのことを恐る恐る話しました。ところが女房は、 ニッコリ笑って言うのです。

「それは本当に良いことをしましたね。」

「明日はお正月、 良い年が迎えられるでしょう。」

夫は本当にほっとしました。

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その夜のことです。トントン、 トントンと戸を叩く音がしました。

夫がそっと戸をあけてみると、 美しい旅姿の娘が立っていました。

「私は旅の途中です。どうか今夜一晩でも泊めてもらえないでしょうか。」

「私たちはこの通りの貧乏暮らしです。何のお世話もすることもできません。」 と夫は断りました。 すると娘が、 「食べ物なら持っています。ご一緒にお正月を迎えましょう。」と言いました。

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娘は米一升と糸筒をみやげに差し出しました。米三粒を釜に入れると、 釜一杯のご飯ができ、 また、 糸筒は織っても織っても絹が出てくる不思議な米と筒でした。

娘は夫婦に頼み、 養女となって親孝行をしました。

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ある日のことです。夫婦のもとに国司の使いがやってきました。

「この里に美しい娘がいると噂を聞いたが、 娘がいる家はこちらか。」

「そのような美しい娘を里に置いておくことは惜しいから、 国司のもとへ娘を差し上げるがよい。」

当時、 国司は大変な権力者で 「それが出来なければ、 その代わりに小判千両を用意せよ。」

との難題でした。夫婦は大変困りました。

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娘はこのことを知ると夫婦に言いました。

「どうか、 明日の朝早く木原山に登り、 小判に似た鶴の葉千枚を取ってきてください。」

夫婦は娘が言うとおり、 翌朝木原の山に登り鶴の葉千枚を取ってきました。すると、 それがいつの間にか小判千両に変わっていたのです。

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国司の使いが、 約束どおりやってきました。

「娘をもらい受けにきた。」

夫婦は小判千両を渡し、 

「娘をやることは出来ません。」

と断りました。国司の使いは、 鶴の葉の小判千両をもって国司のもとへ帰って行きました。

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それから後のことです。娘は夫婦に言いました。

「私は今まで黙っていましたが、 実は人間ではありません。去年の暮れにお助けいただいた鶴…」

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と言い終わらぬうちに、 今までそこにいた娘の姿は消えて、 一羽の美しい鶴に変わっていました。

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鶴はピョンピョンと跳んで今の宇土市神馬町舞出(まいだし)の田んぼまで来ると、 勢いよく大空に飛びあがりました。この話にちなんで、 ここを舞出(まいだし)と呼んでいます。

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ここから舞い上がった鶴は、 今の宇土市野鶴町鶴見塚あたりに消えていきました。その鶴が消えたあたりに夫婦がお経を埋めて塚を築き、 鳥類の安全を祈りました。

夫婦は、 塚の南に屋敷を移し、 後に男女3人の子どもが生まれました。名を丹波(たんば)、 式部(しきぶ)、 伯耆(ほうき)と名づけ末永く幸せに暮らしたということです。

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