8月26日(11時00分・芦屋港出港、16時15分大阪南港入港)

大王のひつぎ実験航海事業

航海日誌

8月26日(11時00分・芦屋港出港、16時15分大阪南港入港)

 今日は実験航海目的地の大阪・南港への出港。最終の荒天予備日の設定が「運良く」台風避難日と重なって、芦屋・ベルポートを予定どおり出港する。台風余波が残っているため少し遅れ目に出たものの、西の風4~5ⅿで波が高い。昨夜、下川隊長が宇土からこれまで苦闘の航海を続けてきた水産大学校の漕ぎ手たちと「明日は全部漕ぐつもりでいくぞ」「オーッ!」と気合を入れて今日を迎えた。もちろん、フェリーや貨物船などの大型航路が錯綜する今日の航程ではそんなことは無理で、大阪市港湾局の人も「そんなん、勘弁してほしいわ」。

 もちろん気持ちの問題。それには訳がある。市長さんや教育長さんが来ている各寄港地での歓迎式に合わせるため、古代船が漕行できる実験航海隊形海域から曳航隊形に切り替えて急ぎ、「古代船が石棺を曳いているところを見たい」という地元の要望で港口で「海王」を切り離し、「有明」をつないでその日の最後の力を振り絞って入るというのが常だった。ところが、その港口の様子を見ていた人々からは、「やっぱり港の前だけで漕いでるんやわぁ」などと言われ、沖合の、人の見ていないところで死力を尽くしている漕ぎ手達の心の傷は深かった。「今日は全部漕ぐ」はそういう気持ちのあらわれだ。

 最終日。神戸大、広島商船高専、波方海技学校、九州看護福祉大、長崎大の応援漕ぎ手たちには、その「人が見ていない」海域で漕いでもらった。感想は「こんなきついとは思わなんだ」。

 さて、大阪南港・オズ岸壁。またまた時間調整などが入って一気に漕ぎ着けなかったが、水大の漕ぎ手たち全員で気合を入れて、「海王」と「有明」がそれこそ美しくゴールした。

 宇土~大阪南港までの航程距離は、計画では860㎞だったが、実際は1,006㎞になった。それだけ実験航海隊形が出来る海域を探して出来うる限りの実験をやってきたことになる。

 「大王のひつぎ」の宇土から大阪までの古代航海復元に挑戦し、石棺を送り届けるこの実験航海は、「海王」、「有明」、「火の国」の大阪への着岸と漕ぎ手全員の上陸で使命を終えた。最後に、推古女帝の時に百済から渡ってきた伎楽を天理大雅楽部に演じてもらい、大王の魂と海の神を静める古代式ですべてを終えた。

 中島みゆきの歌で地上の星を探すのはツバメだが、「海上の星」を探すのはカモメだろう。陸と海では鳥さえ違う。あとは石棺を陸の星屑たちにまかせ、海の男たち、女たちはまた黙って海に戻っていく。

この航海日誌も、閉じる時が来たようだ。

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