第二回 実験航海に向けて(後編)

第五部 古代と海への挑戦

第二回 実験航海に向けて(後編)

 間近に迫った「大王のひつぎ」古代船団の出航。その主役である古代船「海王」と石棺積載船「イカダ台船」の復元への道程を振り返ります。

古代船「海王」の復元に挑む

古代船お披露目式の様子の写真 


 
 昨年10月31日に宇土マリーナで行われた「古代船お披露目式」。

 海王にかけられた純白の幕がいっせいに引かれ、宇土市民の前に始めてその優美な姿を現しました。

 この海王は和船大工・松田又一さんの助言を受け、藤田造船所(福岡市志賀島)の藤田清人さんを中心に約4ヶ月かけて建造、昨年10月に完成したもの。長さ11.9m、最大幅2.1m、重さは推定約6tの堂々たる18人漕ぎの木造船で、モデルは西都原古墳群(宮崎県西都市)から出土した有名な船の埴輪です。

 船造りに熟練した松田さんや藤田さんでも、古代船の復元は言うまでもなく初めての経験。一番の難問は木の乾燥によるヒビ割れをどう防ぐかで、藤田さんの悩む日々が続きました。しかし、松田さんのアドバイスによる「入れ木」技法(ヒビ割れ部分に別の木材を入を入れ込む)を採用、この問題を見事に克服しました。

 現在、海王は下関の水産大学校(山口県下関市)で保管され、カッター部の学生が、来る航海に向けて海王に乗込み、日々熱のこもった練習を行っています。

 


 

「未知の船」イカダ台船の建造

イカダ台船の復元の様子の写真

 海王が曳航するイカダ台船の復元には、多くの困難がありました。それは、台船が理論的にはその存在が想定されるものの、当時造られた実物が発見されていない、いわば「未知の船」だったからです。

 そこで、県青年塾の木村浩徳さんを中心とするメンバーが、1500年前には確かに存在したであろう台船の姿を現代に甦らせるため、まず間伐材を用いて台船の模型を製作。昨年、嘉島産業(網津町)の岩石採取地の沈殿池で実験を行いました。実際に航行するスピードで模型を引っ張りながら人工的に波を起こしたり、製作メンバーが模型に乗って左右に揺さぶって安定具合や重心の位置を確かめました。

 このような試行錯誤を重ね、今春より製作に着手。去る6月9日、ほぼ完成した台船を沈殿池に浮かべて約4tの馬門石を載せる実験を行い、見事成功しました。

 


 

市民のみなさまへ

 この実験航海は、単なる学術的な検証実験ではなく、多くの市民や地域と「海と歴史へのロマンの共有」をも目指す、類まれな大プロジェクトです。

 全国的にも注目を集めており、宇土を日本中に発信する大きなチャンスでもあります。宇土から大阪まで海路800㎞を舞台にした、「現代人による古代と海への挑戦」に大いに期待しましょう。


 

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担当部署:宇土市役所 文化課

電話番号:0964-23-0156