第二部 夢の実現に向けて
第四回 現代によみがえる古代船(後編)
10月22日、名前が「海王」に決まった復元古代船の進水式が、福岡市東区の志賀島にある藤田造船所で行われました。
まずは午前中に「御神入れ」といわれる神事が行われました。これは、「船霊様(ふなだまさま)」という女性の神様に船に乗っていただくための儀式で、船のへさきにお人形・くし・はさみ・口紅・おしろいといった女性の道具。
それから神様のお食事としての五穀。そして安全な船旅のための12文銭と、サイコロ2つを入れます。
サイコロを2つ入れるのは、目が6つずつで12、つまり1年12ヶ月の安全をこめるためです。この「御神入れ」は、大切な儀式として日本の船大工さんたちに伝承されてきたものです。
いよいよ進水
午後からはいよいよ進水式。まずはじめに、地元志賀海神社の宮司さんによる安全祈願祭が行われました。
その後、志賀島小学校6年生の生徒さんの太鼓や笛による「音曲」。テープカットや餅まきと続き、いよいよ進水式のクライマックス、綱切りと、船降しが行われました。
万葉古歌「志賀浦に 船乗りせんと 月待てば 潮もかないぬ いまは漕ぎいでな」のアナウンスの後、「海王」につながれた綱がオノで切られ、お祝いのためにかけつけた宇土雨乞い大太鼓保存会青年部の演奏をバックに、「海王」はゆっくりと海に向かって進みだしました。
「海王」は志賀島のしきたりに従い、志賀島漁協の漁船に引かれ、船と航海の安全をワタツミ三神に祈願するため、沖合いを回航して、志賀島神社を遥拝し、進水式は無事終了しました。
いよいよ、実験航海のための復元古代船「海王」が海に漕ぎ出しました。
進水式の翌日には水産大学校カッター部の学生による漕行実験も行われ、古代船で宇土から大阪まで石棺を運ぶという壮大な夢が、また一歩現実へと近づきました。
10月31日には宇土マリーナで披露式も行われましたが、この模様は次号お伝えしたいと思います。