第三回 現代によみがえる古代船(前編)

第二部 夢の実現に向けて

第三回 現代によみがえる古代船(前編)

復元中の古代船 1枚目の写真 


 
 香木から発するような強い木の香り。トントンと舟板を削る船大工の手斧の音。外から入ってくる潮の香りとトンビの鳴き声もまじり、島の造船所はのどかななかにも沸きあがるような活況を呈しています。

 玄界灘と博多湾の間に鶴の首のように突き出している海の中道。その先に志賀島(福岡市東区)があります。この場所で「大王のひつぎ実験航海」の古代船が志賀島の和船大工さんの手によってよみがえろうとしています。復元した古代の大王(天皇)の石棺を有明海から大阪湾まで海路で運んでいく古代船。

 復元する古代船は、西都原古墳群より出土した船形埴輪がモデルです。松木哲神戸商船大学名誉教授が基本設計を行い、和船建造技術をもつ藤田造船所の藤田清人さんが、福岡市技能功労賞受賞の和船大工・松田又一さんを技術顧問役に迎えて建造をすすめています。

 


 

重さは約6t

復元中の古代船2枚目の写真

 復元する古代船は「木造準構造船」で、2本の原木で船の右側と左側を造り接合して一隻の丸木舟の船底にし、船の左右上部に板を立てるものです。櫂(オール)漕ぎ式の船で、長さ11.9メートル、最大幅2.1メートル、重さは推定約6トンになります。

 復元建造には、日本では簡単に入手できない大きな原木が必要で、大木の輸入ルートがあるアメリカ松を使うことになりました。6月に古代船の原木となる長さ12メートル、太さ1.5メートルの樹齢約500年のアメリカ松2本が藤田造船所に搬入され、近くの志賀海神社の神官による手斧式が行われました。

 建造にあたり、大阪府の木挽き業藤田舟一さんの手により丸太の「胴割り」作業が行われ、10月末完成を目標に「木の総合芸術」といわれる和船造りが本格的に始まりました。

浮上試験は成功

 去る9月14日、建造されていた古代船の浮上実験が、藤田造船所前漁協船だまりで行われ、見事にバランスをとって浮かぶと集まった関係者から拍手がわき起こりました。建造を手掛けた藤田清人さんも「思ったよりバランスがとれており、波に対する復元性も高いようだ」とほっとした表情をみせていました。こうしてロマンを乗せた古代船の浮上試験は無事成功をおさめました。

 現代によみがえった古代船は来年の夏、宇土市から大阪湾までの実験航海に乗り出します。次回は「現代によみがえる古代船(後編)」です。


 

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