第二部 夢の実現に向けて
第二回 古代の運搬具”修羅”の復元に挑戦
「動くのかな・・・」これが修羅に石棺を載せた総重量が9tにもなると、だれもが最初に考える感想です。今ならばダンプカーやクレーン車を使えばあっという間の世界ですが、人力となるとなかなか思うようにいきません。石棺がうまく修羅に載らない、軌道修正が難しいなどいくつもの問題がありました。そのような心配がありましたが、7月24日網津町馬門地区にて行われた石棺・修羅の完成セレモニーでは、コロやテコを使い、約300人もの人が一つになり力一杯に修羅を引っ張り大成功をおさめました。
このとき中心となり指揮をとっていたのが、昔のダンプカーである"修羅"の復元に挑んだ熊本県青年塾の木村浩徳さん(網引町)。木村さんは大阪の古墳から発掘された修羅の図面のみを手がかりに復元しました。復元の際、なぜこの位置に穴が必要なのか、地面との摩擦をどうするのかなど試行錯誤は続きました。「考えるより、まずやってみる」と木村さん。この修羅の構造はとても考えぬかれていて、1つ1つの穴の位置に意味があり、てこの原理などを存分に利用する仕組みになっています。木村さんに修羅についての説明を聞くと、機械がない時代に人がいかに合理的に考えていたかがよく分かります。
運命的な出会い
地権者の丸目智さんは「この木は代々、運搬具として使うよう言われてきた」と事業の趣旨に賛同し原木を無償提供していただきました。修羅の復元ひとつを取り上げてみても様々な出会いがあり、輪が広がっていくのが目に見える大王のひつぎを運ぶ実験航海事業。 次は何が起こるのかを考えるとワクワクしませんか。
現在、復元された修羅と石棺は、宇土マリーナに展示されています。次回は「現代によみがえるる古代船」です。お楽しみに。
修羅データ
陸送用の木ゾリのことで、Y字に分かれた巨木の二股部分に石材などを載せ、幹に縄を結び、多人数で引くもの。石棺を海岸まで陸送する際にこの修羅が使われました。
- 全長:6.22ⅿ
- 幅:0.73~1.56m
- 高さ:0.28~0.73m
- 原木樹種:アラカシ(樹齢約250年)